VRヘッドセットの仕組み|立体に見える理由とVR酔いの原因

VR headset ゲーミングデバイス
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VRヘッドセットをかぶると、目の前5cmにある小さな画面が、なぜ何十メートルも先の景色に見えるのか。買う前にそこが分からないと、店頭に並ぶ「解像度」や「6DoF」の数字も読めません。仕組みは、左右の映像とレンズと、頭の動きを追うセンサーの3つでほぼ説明がつきます。読み終わると、立体に見える理由とVR酔いが起きる原因が分かり、買うときに見る数字が4つに絞れます。

1. 左右の目に少しずれた映像を見せて立体に感じさせる

Meta Quest 3S

VRヘッドセットの中には、左目用と右目用に分かれた映像が映っています。人の目は左右で6cmほど離れているので、同じ物を見ても少しずれた像が届き、脳がそのずれから奥行きを計算しています。ヘッドセットは、このずれをわざと作った2枚の映像を見せて、脳に立体だと思わせています。

ソフトバンクニュースの記事でも、左右で別々の映像を出す「視差」が立体感の元だと説明されています。映画館の3D上映と原理は同じで、違いは映像が見える範囲を全部覆っていることです。

  • ポイント1 映像は1枚ではなく、左右2枚で作られている
  • ポイント2 左右のずれの量で、物の近さが決まる
  • ポイント3 片目をつぶると奥行きが消えるのは、ずれが無くなるから

試しにヘッドセットの中で片目を閉じると、映像が急に平らに見えます。立体感が両目のずれだけで作られている証拠です。

人の左右の目の間隔(IPD)は平均63mm前後で、人によっておおよそ55mmから75mmまで幅があります。ヘッドセットのレンズ間隔を自分のIPDに合わせないと、ずれの量が狂って像が二重に見えたり、目が疲れたりします。

2. レンズが5cm先の画面を遠くの景色に変える

Meta Quest 3

画面は目から数cmしか離れていません。人の目はそんな近くにピントを合わせられないので、間にレンズを入れて、光をまっすぐに近い形に整えてから目に届けます。レンズが画面の像を「遠くにある大きな画面」に見せかけているので、ピントが合い、視界いっぱいに広がって見えます。

レンズには2種類あります。薄い同心円の溝で光を曲げるフレネルレンズと、光を内側で折り返して薄くしたパンケーキレンズです。

  • ポイント1 フレネルレンズは安くて軽いが、明るい場面で光の筋(ゴッドレイ)が出やすい
  • ポイント2 パンケーキレンズは薄くて端まで鮮明だが、光を折り返すぶん画面を明るくする必要がある
  • ポイント3 レンズのゆがみと色のにじみは、ソフト側で逆方向にゆがめた映像を出して打ち消している

レンズごとに目を置く正しい位置(スイートスポット)があり、そこから外れると端がぼやけます。かぶったときに鼻の位置やバンドの高さを合わせる作業は、この位置探しです。

メーカーの公式仕様では、Meta Quest 3はパンケーキレンズ、Meta Quest 3Sはフレネルレンズです。同じ世代でも、レンズの種類で本体の厚みと見え方が変わります。

3. 頭の動きは6DoFのトラッキングで追いかける

PlayStation VR2

立体に見えても、頭を回したときに映像がついてこなければ酔います。ヘッドセットは、頭の向きと位置を1秒に何百回も測って、映像をその向きに描き直しています。向きだけを追うのが3DoF、向きに加えて前後左右上下の移動も追うのが6DoFで、今の主流は6DoFです。

向きは本体に入ったジャイロと加速度センサーで測ります。スマホの画面が縦横に回るのと同じ部品です。位置は、本体の外側に付いたカメラで部屋の模様を撮り、その動きから自分がどれだけ動いたかを逆算します。

  • ポイント1 カメラが本体側に付く方式をインサイドアウト、部屋に置いたセンサーで追う方式をアウトサイドインと呼ぶ
  • ポイント2 インサイドアウトは、暗い部屋や模様の無い白い壁だと目印を見失う
  • ポイント3 6DoFの機器でも、座って動画を見るだけなら3DoFの動きしか使わない

部屋の明るさが足りないと「トラッキングが失われました」と出て映像が止まります。カメラが壁の模様を見失ったときの症状なので、照明を付けるか、壁にポスターや棚を置くと直ります。

ウィキペディアのVRヘッドセットの項目では、向きを測るセンサーとしてジャイロスコープ、加速度計、磁力計が挙げられています。位置を測るカメラは機種によって2個から4個で、数が多いほど手を体の横に下ろしても見失いにくくなります。

4. 手の動きはコントローラーとカメラで読み取る

VRの中で物をつかめるのは、手の位置も頭と同じ方法で追っているからです。コントローラーには赤外線LEDやジャイロが入っていて、ヘッドセットのカメラがその光の並びを見て位置を割り出します。コントローラーが視界から外れるとカメラが光を見失うので、しばらくはジャイロだけで位置を推定します。

最近の機器は、コントローラー無しでカメラが指の形を直接読む「ハンドトラッキング」も使えます。ボタンを押す感触が無いので、細かい操作はまだコントローラーのほうが確実です。

  • ポイント1 背中側に手を回すとカメラから外れ、手の位置がずれやすい
  • ポイント2 トリガーの振動は、手の動きを追う仕組みとは別に、中のモーターで作られている
  • ポイント3 視線を追うアイトラッキングを持つ機器は、見ている所だけを細かく描いて処理を軽くしている

アイトラッキングは、目に見えない赤外線を当てて黒目の位置をカメラで読みます。PS VR2など、見た方向にだけ処理を集中させる機種は、この仕組みで画質と処理の重さの両方をおさえています。

5. VR酔いは映像の遅れが20ミリ秒を超えると起きる

頭を右に向けたのに、映像が右に動くまでほんの少し間があると、目と三半規管の情報が食い違います。この食い違いが乗り物酔いと同じ反応を起こすのがVR酔いです。頭を動かしてから映像が変わるまでの遅れは20ミリ秒以内が目安で、これを超えると酔う人が増えます。

遅れを小さくするために、ヘッドセットは画面の書き換え回数(リフレッシュレート)を90Hzや120Hzまで上げています。テレビの60Hzでは1コマが約17ミリ秒なので、それだけで目安に近い遅れになってしまいます。

酔うのは遅れだけが原因ではありません。自分は立ち止まっているのに、VRの中で体だけが前に進む場面は、目は動いているのに三半規管は動いていないので、遅れがゼロでも酔います。
  • ポイント1 最初の1週間は1回15分までにして、気持ち悪くなる前に外す
  • ポイント2 移動は「スティックで歩く」より「テレポート」の設定を選ぶ
  • ポイント3 IPDが合っていないと目が疲れて酔いやすくなるので、最初に調整する

個人差が大きく、慣れで軽くなる人と、ならない人がいます。体調が悪いときや空腹のときは酔いやすいので、無理に続けないでください。

6. 単体型とPC接続型は映像を作る場所が違う

ここまでの仕組みは、どの機器でも同じです。違うのは、映像を計算するコンピューターが本体の中にあるか、外にあるかです。単体型は本体にスマホと同じ系統のチップが入っていてそれだけで動き、PC接続型は映像をゲーミングPCで作ってケーブルか無線で送ります。

単体型は配線が無く、部屋のどこでも使えますが、チップの性能は据え置きゲーム機より低く、映像の細かさに限りがあります。PC接続型は細かい映像を出せる代わりに、GPUの性能が足りないと前の見出しで書いた遅れが増えて酔いやすくなります。

スマホをはめて使うVRゴーグルは、画面もセンサーもスマホ任せで、追えるのは頭の向きの3DoFだけです。動画を見る用途なら足りますが、手を使うゲームはできません。

項目 単体型 PC接続型 スマホ用ゴーグル
映像を作る場所 本体の中 ゲーミングPC スマホ
追える動き 6DoF 6DoF 3DoF
配線 無し ケーブルか無線 無し
向く使い方 ゲーム全般 細かい映像のゲーム 動画視聴
  • ポイント1 単体型でも、PCにつなげばPC接続型として使える機種が多い
  • ポイント2 PS VR2のようにゲーム機専用で、そのゲーム機の映像を受け取るだけの機種もある
  • ポイント3 無線でPCとつなぐときは、Wi-Fi 6以上のルーターと5GHz帯が前提

7. VRヘッドセットの仕組みが分かれば見る数字は4つ

ここまでの仕組みを知っていれば、機器の仕様表で見る場所は決まります。片目あたりの解像度、リフレッシュレート、レンズの種類、本体の重さの4つを見れば、自分の使い方に足りるかどうかは判断できます。

  • ポイント1 解像度は片目あたり2000×2000前後あれば文字が読める。1800台以下だと画素の網目が気になりやすい
  • ポイント2 リフレッシュレートは90Hz以上。動きの速いゲームは120Hzに対応した機種が楽
  • ポイント3 レンズはパンケーキなら本体が薄く端までくっきり、フレネルなら軽くて安い
  • ポイント4 重さは500g前後の機種が多く、前に重心が寄るものは後頭部のバンドで支える

視野角は横100度前後の機種が多く、数字の差より、レンズの位置合わせのほうが見え方に効きます。店頭で試せるなら、IPDを合わせてから、文字の端がにじまないかを見てください。

仕組みの側から見ると、VRヘッドセットは「2枚の映像とレンズで目に立体だと思わせ、センサーで頭と手を追い、遅れを20ミリ秒以内におさえる装置」です。この1文を覚えておけば、新しい機種が出ても仕様表のどこを見ればいいかで迷いません。

  • 立体感は左右2枚の映像のずれで作られる
  • レンズが近い画面を遠くの大画面に見せる
  • 頭と手はカメラとジャイロで6DoFのまま追う
  • 遅れ20ミリ秒以内とIPD調整がVR酔い対策
この記事のアドバイザー
電山タケル
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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